彼はスター
レンアイ

翔君は無言でカラオケ店を出て行ってしまった。

あたしは翔君のことが全く理解出来なくなってしまった。

今までも理解はしてなかっただろうけど。

いい友だちだとばかり思っていたのに、どうしてキスなんかするんだろう。
スターにとっては挨拶代わりなのかな。

何も言わず帰っちゃったし。

翔君あたしのこと好きとか…………………………………。


バカバカしい。そんなわけない。

他の人なら好きかもっていう考え、頭に浮かんでも打ち消すことなんてしなかったと思うけど。
相手が翔君だと思ったらリアリティが無さ過ぎて、私を好きかもって考えたら打ち消すしかなかった。


あたしは少しカラオケした。せっかく来たから。

お酒もオーダーした。

いつもは歌わない曲を選んだ。歌ったことないからちゃんと歌えなかった。

2曲歌ってチューハイを飲んで店を出た。

翔君がいた。

翔君はガードレールに腰掛けてうなだれていた。

髪型はクシャクシャで通り過ぎる人たち誰も翔君だとは気づいてなかった。

あたしは翔君の肩を叩いた。

翔君は顔をあげた。前髪で目が見えなかった。

「何してるの?」


「ゴメン怒ってる?」

翔君は泣き声みたい。鼻声、情けない声だった。


「怒ってないよ。驚いたの。」


あたしは自然と翔君をなだめるような優しい気持ちで話しかけた。


翔君は手で涙を拭った。前髪の隙間から見えた目は真っ赤になっていた。



「泣いたの?」

あたしの問いに翔君は頷いた。


「えー!?なんで?普通逆じゃない?」


あたしが泣くならわかるけど。




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