彼はスター
「好きなんだ。美緒のことが。」
翔君は赤い目で見つめながら言った。
あたしはさすがに照れた。そして動揺した。動揺を気付かれないように堂々と振る舞った、つもり。
「ありがとう。面と向かって言われると恥ずかしいね。」
あたしが言うと翔君はすかさず
「だから付き合って欲しい。」
と言ってきた。
なんとかごまかして流そうとしていたあたしの計画は崩された。
翔君はガードレールに腰掛けたまま、前髪の隙間から赤い目であたしを見ている。
念のため聞いてみた。
「付き合うって?」
まさかまさかと、今まで打ち消してきた考えが色濃くなってくる。
「僕の彼女になって下さい。」
翔君はガードレールから降りて右手を差し出した。
あたしは唾を飲み込んだ。
なんとなくうっすらずっと感じていたのに気づかないふりして考えないようにしていた。
真面目に言ってくれる人には真面目に答えないといけない。
「ごめん。今彼氏とか作る気になれない。」
「……。」
翔君、無言。
下を向いてた翔君は顔を上げた。
前髪を邪魔そうに顔を左右に振った。あんまり前髪はどかなかった。
「そう言うと思った。」
と、勝ち誇ったようにいった。
赤い目が余計切なさを増した。
でもどうしても考えらんない。翔君の恋人はモデルみたいな生活感のない人が似合う。
何より私に気持ちがないから。
真剣に向き合う勇気がないよ。
それほど好きじゃないんだ。