wild poker~ワイルドポーカー~
「これを使ったら……私、全部忘れちゃうんだよね。ここでの事も……佐伯君の事も」
その霧島さんの震える呟きに、小さく胸が痛む。
しかしそれを隠したまま、ニッコリと笑みを浮かべて見せた。
「うん。でも、霧島さんには待ってる人がいるんだろ?だったら帰らなくちゃ。それに生きていればまた会えるかもしれない。元の世界でバッタリなんて事もあるかもよ?」
「……忘れちゃってるのに?」
「うん。でも……また会える気がする。なんとなく……そんな気がする」
そんな何の根拠もない俺の言葉に、霧島さんは困った様に笑って、それから突然、俺の胸へと飛び込んで来た。
「……約束だよ。だから絶対……死んじゃダメ」
その霧島さんの言葉に、彼女には俺の考えがバレていた事を知る。
「……うん。約束」
そう言ってギュッと強く彼女を抱き締め返すと、それからそっと身体を離す。
「さ、早く」
その俺の言葉に促され、霧島さんは微かに浮かんだ涙を拭いながら、コクリと頷いた。
そしてゲームテーブルに浮かんでいる《役をつくる》のボタンに、そっと指を触れる。