真っ赤な紅を…。
ずーとずーと昔の話、奥山の奥のもっと奥にかのは住んでいました。

髪の毛を振り乱し、小さな角と牙を持つかのには、悲しい定めがありました。
それは、月のうち一日は必ず人の血を体に入れなければ命が薄らいでいってしまうというものでした。
それでも、かのの体に必要な血は小指の先ほどもなく、血を分ける人間には、痛みなどは全くなかったそうです。
それでも、血をいただく時の牙を剥き出す恐ろしい姿から
「命がなくなる」
と言いだす者がでて、かのの仲間は里から奥山に追われ、滅んでしまったそうです。

きっとかのは、ずっと独りぼっちだったのでしょう…。
そう、あの日までは…。
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