密会は婚約指輪を外したあとで
「はい……、料理は得意ではないですが、作るのは好きなので頑張ります」
「ほんと? じゃあ、図々しいけどお願いしちゃおうかな」
一馬さんは朗らかに笑い、車を発進させた。
「──あ、そうだ。1つだけ、ルールがあるんだった」
赤信号で停まっている間、一馬さんが思い出したように付け加えた。
「俺たち兄弟の部屋には、何があっても入らないこと。プレートが掛かってる3つのドアは、開けちゃダメだよ」
「えっ」
「特に、俺の部屋は絶対に」
「でも、トイレかと思って間違って開けてしまった場合は……」
「間違わないで」
「……はい」
一馬さんの強い視線にたじろいだ私は、おとなしく頷いた。
みんなそれぞれ、男の子の事情があるよね。見られたくないものくらい、あるだろうし。と素直に納得する。