One Night Lovers
「あれ、ネネとトシユキさんは?」
「トイレ」
「私もトイレに行ってくる」
トイレという単語で急に身体が反応した。立ち上がってトイレを探す私にケイゴは「あっち」と指をさして教えてくれる。店の外のようだ。
バッグを持って出ようとすると後ろから声がした。
「今行かないほうがいいと思う」
「どうして?」
トイレに行くのを我慢しろと言うのだろうか。私は振り返りざまに座っているケイゴを睨んだ。
「いや、なんでもない。行っておいでよ」
仕方ないという諦め顔でケイゴは私を送り出した。
夜のこんな時間に掃除をしているわけでもないだろうし、行かないほうがいいとはどういうことだ、とムカついたが、ふらふらと歩いているとすぐにそれもどうでもよくなる。
トイレには先客もおらず、どこも変わった様子はない。
なんだ、何でもないじゃないかと用を足してトイレを出た先に、突然その光景が目に入った。すぐに目を逸らし、慌てて店に戻る。
エレベーターの脇に非常用を兼ねた階段があり、その壁際に男女の姿がちらっと見えた。
見覚えのある服装から、人目を避けて絡み合う二人がネネとトシユキだとすぐに気がついてしまった。
元のボックス席にはケイゴが一人、相当な数のグラスを空にしているというのに昼間と全く変わらない顔でケータイを弄っていた。
私が戻ったことに気がつくと、目を上げて少し微笑んで見せる。
「あ、あの、……知ってたの?」
先ほど一瞬見た映像が頭の中にちらつく。衝撃が大きすぎた。他人が抱き合ってキスしているところを、生で目撃したのは初めてかもしれない。
「トイレ」
「私もトイレに行ってくる」
トイレという単語で急に身体が反応した。立ち上がってトイレを探す私にケイゴは「あっち」と指をさして教えてくれる。店の外のようだ。
バッグを持って出ようとすると後ろから声がした。
「今行かないほうがいいと思う」
「どうして?」
トイレに行くのを我慢しろと言うのだろうか。私は振り返りざまに座っているケイゴを睨んだ。
「いや、なんでもない。行っておいでよ」
仕方ないという諦め顔でケイゴは私を送り出した。
夜のこんな時間に掃除をしているわけでもないだろうし、行かないほうがいいとはどういうことだ、とムカついたが、ふらふらと歩いているとすぐにそれもどうでもよくなる。
トイレには先客もおらず、どこも変わった様子はない。
なんだ、何でもないじゃないかと用を足してトイレを出た先に、突然その光景が目に入った。すぐに目を逸らし、慌てて店に戻る。
エレベーターの脇に非常用を兼ねた階段があり、その壁際に男女の姿がちらっと見えた。
見覚えのある服装から、人目を避けて絡み合う二人がネネとトシユキだとすぐに気がついてしまった。
元のボックス席にはケイゴが一人、相当な数のグラスを空にしているというのに昼間と全く変わらない顔でケータイを弄っていた。
私が戻ったことに気がつくと、目を上げて少し微笑んで見せる。
「あ、あの、……知ってたの?」
先ほど一瞬見た映像が頭の中にちらつく。衝撃が大きすぎた。他人が抱き合ってキスしているところを、生で目撃したのは初めてかもしれない。