記憶混濁*甘い痛み*2
白羽に頼めば、新たに譲ってもらえるのだろうか。
『生涯の伴侶の為のロザリオ』
……を。
それとも……
「条野から、譲り受けるか……?」
そう言って芳情院は、友梨の左手に光る二本のマリッジリングを見つめる。
「そろそろ外してくれないか?友梨…」
シーツの上におかれた左手に触れると、キュッと拒絶をする様にシーツを握りられた。
「嫌か?まだ……条野が、好きなのか?友梨?」
友梨は、なんの反応も返さない。
ただ悲しい顔で、薄い寝息をたてているだけだ。
「そんな簡単な事じゃない……か」
友梨の髪を撫でて、芳情院は小さく苦笑した。
オマエが望むように生きてやりたいけれど、オマエの側にいればいる程、我儘な自我が顔を出す。
もともとオレの友梨だ。条野に返す義理などないではないか。
友梨はオレを求めはやく日本に帰りたがっている。
そうすれば条野との縁も消える。
その時点で離婚をしてもらえれば、それが一番の解決策ではないか?
なんて
……此方側だけの理屈だな。
条野の意思など、何一つ考えていない。
そして、友梨の意思さえも。