記憶混濁*甘い痛み*2

今にもタバコの先から零れそうになっていた灰を灰皿に落とし、空也は短くなったタバコを指で掴むように持ち替えた。


「相変わらず、みっともない吸い方をなさいますね、代表は」


ほんの少しだけ眉をしかめて、芳情院。


「まあそう言うなよ。イイオンナ見っけに世界中飛び回ってると、よ。この最後のひと吸いが大事なのよ」


そう言って空也はフィルターぎりぎりまでタバコを吸いきると、几帳面に爪でタバコを押しつぶした。


芳情院は、普段の空也の印象とは異なる几帳面な行動を見て。


「代表のそれを見ると、思い出しますよ。友梨と、親子なんですねぇ……勿論友梨がタバコを吸う訳ではないのですが、几帳面な所に血の繋がりを感じる」


と、呟いた。


すると空也は、訝しげな顔をして。


「あ?何だよ。友梨のあの可愛い顔はどう見てもオレ様の遺伝子だろーが」


と、肩をすくめ、すぐに次のタバコを取り出し口にくわえ、あちこち傷だらけのジッポーで火をつけた。


「まあ確かに、深山咲の家系の顔ではありますけどね……」


……あまり似ているとは、言い難い。


「何、その引っかかるものの言い方。相変わらずかわいくねぇなぁ」


「代表に可愛いと思われても困ります」
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