記憶混濁*甘い痛み*2

「わた、し?」


空也の言葉に、ふっと友梨の瞳に輝きが戻った。


けれど。


それと同時に。


「……アカイアカイアカイ……血が、こんな……に?イヤ!お父様ッ!お父様、助けて、助けて助けて!友梨のっ!友梨と和音先輩の……!やだやだやだやだやだやだやだやだやだぁぁぁぁ!!!もうやだ、もうやだあぁぁぁぁぁ……」


友梨のその部分の『記憶』まで、引き出してしまった。


「……友梨!」


娘の切なすぎる悲鳴に顔を歪め、空也は叫び続ける友梨の名前を呼び、ただ強く抱きしめる。


自分ではどうすることも出来ない。


条野を求め泣いたあの夜の友梨と、現在の友梨は違う。




空也はギリギリと奥歯を噛み締めながら、それでもあのいけ好かない、狩谷の到着を待つしかなかった------



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