シブヤクーロン
「分かった。送る。」
安田がそう言ったのは、あたしがさっきまでのことを一通り話し終わった直後だった。
今日に限らず、最近よりが酔いつぶれて帰って来ること、その介抱よりその後の謝罪行為が実はめんどうなことをだらだらと全部話してしまった。
帰りたくない理由を説明したというのに、安田は車の鍵を持ってすたすたと玄関に行ってしまう。
「やだ。もうちょっと居させてよー!」
「だめだ。帰れ。」
「なんでー。やだ、もう疲れたもん。たまにはよりが待ちぼうけくらえばいいのよ。」
そう言ったら安田は音を立てて戻ってきた。
いつにも増して恐い顔してあたしを叱りつける。黙って顔だけで。
確かにちょっとよりを邪険しすぎた言い方したかなあと思ったけど、おっさんが怒らなくてもいいじゃん。
黙って聞いて、黙って怒るなんてずるいよ、なんか言えばいいのに。
おっさんは、あたしを引っ張って車に乗せた。
よりにはあたししかいない
だから逃げちゃだめだって、安田が言ったように思った。
「安田のおっさんも、来てよ。」
家の前に着いたとき、そう言った。
なんか帰りにくかったから。
でもよりが、安田が自分の迎えには来ないのは、その間あたしといるからだろうって言ったのを思い出して、ひとりで車から降りた。
安田はちょっと微笑んだ気がする。
やっぱりよりは先に帰っていた。
よりが持ち帰った分だけ、部屋の飾り付けがしてあって、また焦げた料理のにおいがする。
奥の部屋にいる気配はする。
よりもきっとあたしに気付いてるはず。
でもなかなかただいまと言えない。
それでも勇気を出して扉を開けると、そこには手首から血を流したよりが倒れていた。