妄毒シチュー

そうか。

確かに、恋なんて自分でコントロールできるものじゃない。

そう言われるとコータがあたしとは違う女の子を好きになっちゃったのも、仕方なく思えてくる。


「ねぇ、ミナちゃん」

ニセ天使があたしの目の前に立った。
窓からさす夕陽に照らされ彼の長い影が部屋を覆う。

床に転がったワインの空き瓶。
それを指差して彼が囁いた。




「このワイン、毒が入ってるよ」



フローリングの床に転がったガラス瓶。そこにうっすらと残った赤い液体。
黒いコーヒーカップの底を濡らす、毒々しい鮮やかな赤色。


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