妄毒シチュー
友達の彼氏か?仕事関係の人か?
美少年の隣を歩きながら一生懸命記憶を探ってみたけれど、彼が知り合いかどうかを思い出す前にあたしのアパートに到着してしまった。
「ここ?ミナちゃんのアパート」
明るい住宅街の中に立つ、単身者用の小さいアパート。
クリーム色の外壁とチョコレート色の屋根を見上げながらあたしにそう尋ねてきた彼に
「あ、はい……」
アパートの玄関の前で鍵を出しながら頷いた。
ん……?
ちょっと待って。
「今、ミナちゃんて……」
あたしの眉間に深く浮かんだシワを無視して、にっこり笑う美少年。
「ねぇ、ミナちゃん。
ビール運んだお礼にお茶くらいご馳走してよ」
そう言って、眩しいくらい綺麗な笑顔であたしの事を振り返る。
いや、いや、いや。
ちょっと待て。