妄毒シチュー

「ちょっと、なんであたしの名前知ってるの?」

さっき道端で偶然あっただけの美少年が、当然のようにあたしの名前をちゃん付けで呼ぶ。

警戒するように、彼と距離をとったあたしに向かって

「なんで知ってるかって?」

勿体ぶるように、からかうように。彼は肩をすくめて笑って見せた。

「俺は何でもお見通しなんだよ」

「……へ?」

お見通し?

ぽかんと口を開けたあたしに向かって、美少年は柔らかく微笑んで口元に人差し指をぴん、と立てる。




「誰にも言っちゃダメだよ?
実は俺、天使なんだ」


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