妄毒シチュー

「自分を振った男なんて地獄に落ちろ、とか思わないの?」

「思うよ。
思うけど、不幸にしてはちょっと大袈裟だなと思って」

「大袈裟?」

「うん。仕返しなら一発殴るくらいで十分」

「一発殴って許すなんて優しいね、ミナちゃんは」


ニセ天使はゆっくりあたしの髪をなでながら微笑んだ。
その髪をなでる優しい感触の心地よさと、体中にめぐるアルコールの力のせいで強い眠気が襲ってくる。

体はどんどん重くなるのに、心だけフワリと持ち上がるような気持ちのいい浮遊感。
重くなるまぶたを必死に開こうとしていると、頭上で彼がクスクス笑いながら言った。

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