妄毒シチュー
狭いソファーで寝たせいで、体がダルい。
首を回してバキバキと音をならしながら時計を見ると、夜の8時過ぎだった。
確か夕方に酔っ払って寝たから、3時間近く寝たんだ。
「うー、喉渇いた……」
ゆっくりソファーから立ち上がって、誰もいない部屋を見渡す。
「あいつはほんとに帰っちゃったんだ……」
ぼんやりとした頭で、ニセ天使の綺麗な顔を思い出す。
名前も歳もしらない彼。
あたしの愚痴をあんなにいっぱい聞いてくれたのに、自分の事は何にも教えてくれなかったな。
せめて、名前くらい聞いておけばよかった。