天使のような笑顔で
天使捕縛

passion

「全治3週間ってとこだね。部活はやっちゃダメだよ」


初老の整形外科医の言葉。

あまりにも軽過ぎて、思わず聞き流してしまいそうだった。


「3週間?いや、そんなに痛くないんですけどっ」


「剥離骨折だよ。甘くみてると、それじゃすまなくなるよ」


まさかのドクターストップ。


県大会の予選が今週末からだっていうのに?

部活禁止って、何だよそれ!?


「高校行ってもバスケしたいなら、今無理しちゃダメだよ。じゃあまた、来週診せに来て」


最後まで軽い感じの医師の言葉に、俺はイマイチ実感がわかないままで。

診察を終えて会計を済ますと、湿布をもらって病院を出た。


「3週間か……」


きっちりと包帯の巻かれている左手首を見ながら、俺は漠然としていた。


確かに、痛みはある。

でも、我慢できないほどではなくて。


誤診なんじゃないかと、疑いたくなってしまう。


昨日、確かに部活でパスを出す時に手首に痛みが走った。

ただ、基本右利きの俺は最悪片手でも何とかできると思っている。


「休んでらんないんだよ……」


一番大事な時に、キャプテンが出れなくてどうするんだよ?


俺が休んでる間に試合に負けたら……?

ケガで引っ込んでる間に引退、なんて事になりかねない。
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