天使のような笑顔で
どうやら、誤報が流れているらしい。


いつの間に、『親友』から『恋人』に昇格してたんだよ?俺。


「……いや、彼女じゃないよ」


「えっ!?だって、すごくいい雰囲気だって噂ですし、先輩が桜庭さんのマンションに入ってったって目撃情報もあるんですよ」


……芸能リポーターでもいるのか?この学校は。


何だか、どっと疲れてきた。


「とりあえず、俺らは親友だから。彼女には、ちゃんと好きな人がいるよ」


そう言って、俺は乾いた笑いを零す。

そうなんだよ、俺らはただの親友なんだから。


「ホント…ですか?」


「あぁ。だから、他の人達にもちゃんと誤解といておいて。彼女に迷惑掛るからさ」


そう言いながらも、心の中では逆の事を思ってる自分がいる。


恋人同士に見えるなら、そのままにしておいてもよかったんじゃないか、って。

彼女が認めなくても、周りを先に認めさせてしまえばいいって。


「分かりました。みんなにも伝えておきます。びっくりしすよ、きっと」


その言葉には何も返さず、俺は彼女と共にゆっくりと体育館へと向かった。
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