天使のような笑顔で

delightful

俺の反応を窺っているかのように、見上げてくる安以。

そんな彼女の真意をつかみきれなくて、つい目をそらしてしまった俺。


この静かな空間に響いているのは。


正確に時を刻み続ける、秒針の音と。

グランドから微かに聞こえる、どこかのクラスの体育の授業での喧騒だけだった。


安以は…決して俺から視線を外そうとはしない。

きっと、俺が何かしらの言葉を発するまでは。


「……俺の事からかって、そんなに楽しい?」


しばらく考え込んでいた俺が意を決して絞り出した言葉が、これだった。


彼女のマンションに行った時もそうだ。

俺の反応を見て、楽しんでるとしか思えないよ。


「からかってなんか、ないですよ」


だけど、安以はそれを否定する。

少し怒ったような顔で、それでも俺から目を離さずに。


「だって、好きなのは島崎先生なんだろ?それなのに俺とつき合うとかって、どう考えてもからかって楽しんでるとしか思えないよ」


島崎先生の事は、言わないでおこうと思っていたのに。

つい、口が滑ってしまった。
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