秘密恋愛



聖夜さんと向かい合わせに座る。


聖夜さんはケーキを食べながらパソコンを触っていた。


私はケーキを食べる気にもなれない。


これが、もしクリスマスを一緒に過ごすカップルの関係なら、私は喜んで彼の買って来たケーキを食べるだろう。


でも私は拉致された身で、聖夜さんは私を拉致した人。


私は殺人を目撃した被害者で、聖夜さんは人を殺めた殺人犯。



「ケーキ、嫌いだった?」



なかなか手をつけない私に聖夜はそう聞いてきた。


嫌いじゃない。


寧ろ、ケーキは大好きだ。


私は首を左右に振った。




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