秘密恋愛




「じゃあ、食べて?」



聖夜さんはそう言ってニッコリ笑う。


ケーキに目を落とす。


フォークに手を伸ばすけど、手が震えて上手く掴めない。



「どうしたの?手が震えてる……」


「ゴ、ゴメン、なさい……」


「何で謝るの?」


「わからない……」



私は首を左右に振った。


なぜ手が震えるのか、自分でもわからなかった。



「毒なんて入ってないから安心して?」



聖夜さんはそう言って、私の前に置かれたケーキのクリームをフォークで掬い口に入れた。



「ほらね、大丈夫でしょ?」



そう言ってクスリと笑う聖夜さん。


私は震える手でケーキを一口大に切って口に入れた。


味なんてわからない。


ただ、咀嚼して喉を通っていくだけ。





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