飼い犬に手を噛まれまして


 広い寝室を出ると、長い廊下。タイルは白い大理石だ。

 気後れしちゃいそう。先輩、すごいゴージャスなマンションに住んでるんだ。私の部屋なんて、見せなくてよかったかも。

 ホテルみたいなシャワールームで体を流す。


 まさか、泊まりになるなんて予想してなかったけど、メイクポーチを持っていたのは命拾い気分だ。



 私が出ると、先輩がシャワーを浴びる。

 何か朝食でも作ったほうがいいかなぁ、と思ったけど先輩の部屋には食材がほとんどない。


 料理しない人なの?



 なんか意外だ。先輩は、何でも器用にこなせそうなイメージがあるのに。

 シャワーから出てきた見るも麗しい上半身をさらけ出した先輩に「先輩、ひょっとして料理しないんですか?」と訊くと


「料理だけは無理。不得意分野だ。あ、今度茅野が何か作りにきてくれよ」と、サラリと言った。



「それって……私はまたこの部屋に来ていいってことで、それはつまり、私たちは付き合うってことですよね?」


「付き合わないのかよ」


「いえっ! 付き合わさせてください!」


 ボディーソープの香りをさせた先輩がニヤリと笑った。不意打ちでキスをされて余裕の笑みで「いいよ」と囁く。

 それだけで、ノックダウンされてKO負けした選手みたいに打ちのめされる私。

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