飼い犬に手を噛まれまして

「シンガポールに行っちゃうんだって、でも彼女泣いてたの……多分別れたくないんだと思う……私、深陽さん追いかけたんだけど」


 そこまで一気に話すと、ワンコは苦しそうな顔をした。私の説明の仕方が下手くそだから、混乱させちゃったのかもしれない。


「ごめんね……ワンコ……深陽さん、来てくれたのに……私……」



「紅巴さん……」



 なんで、年下相手にこんなに不器用なことしか言えないんだろう。筋道たてて、ちゃんと説明できないなんて最低だ。

 涙でワンコの顔がぼやける。すると、腕を引かれてワンコの胸に包まれた。


「ありがとう」


「ワンコ……」




 ワンコの手が私の髪を優しく撫でた。


 お願い、諦めたような声ださないで……


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