飼い犬に手を噛まれまして
シャワー浴びてないなんて思わせないくらい爽やかなままの先輩は、甘いコーヒーの香りがした。
「じゃ、仕事するか。今夜電話するよ」
「はい……」
先輩がコピー室から出ていった。コピー機はその役目を終えたのか、静かに沈黙していた。
「あ、ヤバい。これ急いでコピーしてこい、て萌子先輩に言われてたんだ……」
書類の束を抱えてコピー室の電気を消した。緩んだままの顔をどうやって仕事モードに切り替えるか試行錯誤しながら、庶務室に戻る。
胸のドキドキは、おさまりそうもない。
ブランクがあるから、恋と無縁な生活をしていたから……今がすごく新鮮な恋愛ができてるのかもしれないなんて自己分析して、またドキドキした。