飼い犬に手を噛まれまして
─────「やだぁ……私、泣けてきた」
朋菜は本気で涙ぐむと、愛用のピンクのタオルを目頭に押し当てた。
今日も朋菜はランチの時間に、私の会社の近くまでやってきて短い休憩に付き合ってくれている。
ワンコの心配をしてくれていた朋菜には、ざっと大まかに深陽さんの話をした。もちろん、ワンコの了解は得ている。
「ワンコ、ふられちゃったんだ」
「うん、本当冴えないワンコなんだよね……プレゼントしたボール気に入っちゃてるし、ワンコはどんどんワンコ化してるし」
「……ぶっ! アハハハ! ワンコ化? 確かに! 大体さ、男と女が一つ屋根の下で暮らしていて何もないとこが立派な飼い主さんとペットだよね」
正確には、全く何もないわけじゃないけど、あの時ワンコは私を深陽さんと間違えていたわけだしノーカウントだ。