飼い犬に手を噛まれまして

「捨てました」


「なっ? マジで捨てんですかっ?」


 会議室前に、ワンコが傷ついた顔をして私を見つめてくる。


 騙されないから、この顔には絶対騙されないから……


「もういらないでしょ?」


「俺と紅巴さんの思い出の品なのに……」


「ワンコ、もうそういうの止めてよ。これは仕事なんだから……」


「わかってますよ」


 ワンコ一人が被害者みたいだ。私が悪者で、年下の男の子を虐めてる意地悪な女みたい。


「ドア、開けますよ。副社長」


 初めて入る、重役会議にしか使われない会議室。巨大なスクリーンに木の机、全席肘掛けつきの回転椅子。




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