飼い犬に手を噛まれまして
「もちろん、山咲や須田もBNJのプロジェクトに参加させます。郡司をリーダーに選んだのは、BNJでの受賞こそはないけれど、他での活躍はめざましく今季我が社で一番受賞に近い男だろうと、見込んだからです。
この件につきましては、前回の役員会でも議論いたしましたが……いかがでしょうか? 皆さん」
企画デザイン課長は、言葉を濁して発言を終わらせた。
「もう決定したことだ」と社長が低い声を出す。その声は、ワンコを責めたようにも聞こえた。
ワンコとは全然似ていない社長。掘りの深い顔にシワが刻まれて、髪は綺麗なグレイ。ワンコのお父さんなら、もう少し若くてもいいはずだけど……たしか社長はうちの親より年上だったはず。
「決定したことなら議題にしなければいい。時間の無駄だ」
社長は「次に進もう」と進行役を促した。
なに、この不穏な空気。
なに、この悔しそうなワンコの顔。
私、とんでもないことに巻き込まれてるよ。
役員会は、休憩を挟んでお昼頃まで続きBNJのことだけじゃなくて、もっと具体的な経営指数、株の動向、損失、夏のボーナスの話までに及ぶ。
それらは、全部決定していることだけど、延々と続いた。