飼い犬に手を噛まれまして


────日が暮れてライトアップされるオフィスビル十八階のイーストエージェンシーに、もう一度行ってみたけど結果は同じだった。

 受付嬢に門前払いされて肩を落とすワンコ。

「わかりました。俺たち、明日の飛行機で帰ります。シンガポール航空925便です」


 ワンコが、だめ元で便名を伝えてみたけど受付嬢は首を振るだけだ。




「紅巴さん行きましょう。こんな強情な女だとは思わなかった」

「ワンコ! ちょっとそんな言い方ないじゃ……」

「紅巴さんのほうがよっぽども優しくて頼りがいがあります」

「あのねぇ……」



 お昼寝をたくさんして顔が少しスッキリしたワンコと、エレベーターを降りる。


「また明日の朝来てみる?」


 ワンコは首を横に振った。


「でも、今のままじゃ深陽さんの真意がわからないままじゃん」

「わざわざ日本から来たのに、顔すら見せない相手ですよ? 真意なんてわかりきってますよ。深陽も親父も同じ種類の人間なんだ……仕事仕事仕事で、愛とかそんなもんには興味がない。俺なんて……」

「自棄にならないでよ、ワンコしっかりしてよ」


 ワンコは私の肩に額をのせる。
 よしよし、と背中を撫でる。


「もうしょうがないなー、ご飯でも食べて元気だそっか?」

 ガイドブック片手にディナーのレストランの地図を確認する。


「ワンコ、夜景が絶対に綺麗だから。夜景の見えるレストランに行こう」

「紅巴さん、ここですか? 今いる場所からも近そう」

「うん、行こう」


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