飼い犬に手を噛まれまして


 みはる好きだよ、って一晩に何十回も何百回も言ってくれた星梛が今夜からは、いなくなるんだ。


 別れを先延ばしにしただけだったのかもしれない。でも、ただ楽しかった。




 星梛が好き。



 手放せない。大好き。




 ずっと、ずっと私の部屋で飼っていたかった。私だけの星梛でいて欲しかった。


「支社長……」


「ごめん、何でもないの。会社に着くまでに泣き止むわ。ごめんなさい」



 私の答えは、離れたくない、だよ。星梛。それなのに、どうして帰っちゃうの……



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