飼い犬に手を噛まれまして


「いらっしゃい? おかえりじゃないの?」


 この前去った時より大きなスーツケースが二つおろされた。



「あー、暑い。やっぱ東南アジアは、暑いなー」


「星梛っ!」



 星梛は、袖で額の汗を乱暴に拭うと、首元をパタパタとさせて風を生み出す。


「ただいま、みはる」



「……せ…………な」



「泣かないでよ。そんな寂しかったの? たった一週間じゃん」



 外気と飛行機のシートみたいな匂いがする星梛にすがりつく。



「寂しかった、星梛がいなくて寂しかったの……わたし……星梛のばか」



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