飼い犬に手を噛まれまして
「はあ、はやく郡司くん帰ってこないかなぁー。
毎日見慣れちゃうとそこにいるのが当たり前だけど、街中探してもお目にかかれないレベルの美形だもの。感謝しなきゃよね」
「先輩、その扱いなんか色々間違えてますよ……あ、もしかして郡司先輩が帰ってくるから機嫌がいいんですか?」
「機嫌がいい? いつも通りでしょ?」
「はい、先輩はいつも通りです」
萌子先輩が不自然に頬杖をついた。窓の外を眺めながら、左手の指をクイクイと動かした。
「あ! 先輩、新しい指輪自分で買ったんですか?」
先輩の薬指に、大きなダイヤモンドの指輪がキラリと光っている。
「バカ! 自分で買うわけないでしょっ! この鈍感女っ!」
「ひゃっあ! すみませんっ!」
いつもの萌子先輩に戻った!