乱華Ⅰ【完】


「いてぇよ」



ボソリ言ってタクの手を払いのける。



「あぁん?」


「痛ぇっつってんだよ。ボケ」


「お前マジでそんな口きいてたらいつか泣かすぞ」


「…好きにすれば?」



あぁ。面倒くさい。
タクが耳元で脅してくるけれど、怖くはない。



多分タクはそんな事しない。
いや、できないと思う。



何故そう思うかと聞かれれば―…



長年の勘ってやつだ。
それ以外に説明のしようがない。



「まぁこーんな感じで可愛げねぇけど、しっかり守ってやってよね〜」



颯人からバイクのキーを受け取った修はくるくる回しながら言う。



…悪かったな。
可愛げなくて。



ギロリ睨みつけても修にはどこ吹く風。
ヘラリ笑って「俺その辺流してくっから」部屋を後にした。



「あ、あぁ」



部屋のドアが閉まったと同時に漸く言葉を発したのは蓮。


その顔は私とタクに向けられたままだった。



…何?


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