乱華Ⅰ【完】
その言葉にシーンと静かになる。
「………は?」
先ず口を開いたのは司。
お前も知らなかったのか?
意味が分からないと全身で言っている司は、ピンで散らした髪を弄る。
「おいおい。嘘だろ〜?」
修もタバコを手に挟んだままポカンとした表情。
いや、俺も嘘だろ?って感じだし。
あの子、そんな風には見えなかったぞ?
さっきの倉庫での事を思い出す。
うん。全然。答えはNOだ。
タクと言い合ってたし。
全くそんな風ではなかった。
「…あの女」
碧がボソリ呟く。
どうしたんだ?
少し様子が可笑しい碧を横目でチラリと見たが、正宗が言葉を紡ぐからそこから正宗に視線を戻す。
「…多分、だ。少なくとも喧嘩売った時は“そう”だった」
そこで正宗はハッとして、倉庫入り口を見た。
それに倣って視線を上げれば―…
「颯人」
俺たちのボスが特攻服片手にゆっくりとした動きで階段を降りる。
カンカンカン。
静まり返ったそこに響いた。