乱華Ⅰ【完】
「…タク」
そんなに大きな声を出したわけじゃない。
だけどその一言に颯人も正宗も司も勢い良く振り返った。
1番吃驚していたのはタクで、そのまま流れるようにチラリ私の頬にある湿布を一瞥した。
私と視線が交わったその瞳はやけに悲しそうで、言葉に詰まっているとタクはダン!と壁を殴った。
「…なんで来た」
「…え」
ゆらり、立ち上がったタクは一直線に私の方へと歩いてくる。
冷ややかな言葉を落とすタクに胸がチクリ痛んだ。
「お前こんな所に来て何してんだよ?自分がどんな目に遭ったかわかってんのか?」
「…タクいい加減にしろよ」
途中正宗が低い声で制したがそれでもタクは止まらない。
無意識に胸にあるネックレスを握り、タクが紡ぐ言葉をただ聞くだけの私はなんて無力。
何か言わなくちゃ。
…だけど言葉がでない。
「俺が守れなかったからお前はそうなったんだろ!?そんな奴の為にこんな所来てんじゃねーよ!」
「拓人、キレる相手が違ぇだろ」
私の目の前に来ていたタクを拓人と呼んだのは颯人で、その手はタクの肩に置かれていた。