桐華ー天然ボケ男が学園の王子様(女子)に恋しちゃったら【完】


「………怒れなかった……。
あのプライド高い恋理が、他人のために動くことを優先する恋理が、自分を護るために逃げた、それは……あのときは、恋理を護る方法はほかになかったって、わかってる。
けど、今になっても、あのときのまま――恋理が背を向けた時間に、止まったままでいる。今更、どうにも出来ない……」
 


……氷室くんが、ここまで話すなんて――話してくれるなんて思ってなかった。



恋理ちゃんや彼方さんや同じ中学の子たちが、氷室くんを「天然」とか「ボケてる」とか言うけど、その実、芯はしっかりしていると思っていたから。
 


こんな風に弱音を吐いてくれるなんて、まだ思っていなかった。




指先は勝手に動く。
 


氷室くんの耳の辺りの髪に触れた。



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