女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「・・・・繁忙期で忙しくて全く会えなかったんです。それなのに、突然仕事帰りに呼び出されて、疲れきって不機嫌な顔で『俺達、結婚するよな。戸籍だけでも先に入れてしまわないか?』って言われたんです」
「は?」
―――――――・・・・・何だと??
私が目を点にしていると、彼女はどんどん顔を歪ませながら続けた。
「まだ、両親への挨拶だってちゃんと済ませたわけじゃあないし、わ、私は社会人になってようやく仕事の事も判ってきたところなんです。だから、別にそんなに急ぐことないじゃない、って言ったら、『黙って言うとおりにしろよ』って・・・」
ムカついた余り、私は声がひっくり返った。
「・・・何ですって??そっ・・・そんなムードもへったくれもない上に責められる様なプロポーズってある?」
「・・・ですよね。私は、まず二人で決めてから各両家へ挨拶へ行って、結納して、式場決めてって、順番通りにしたかったんです。そんな・・・そんな、間に合わせみたいな、嫌でした」
そりゃあそうだろう。この娘さんは、憧れの結婚式図をちゃんと持っているタイプの女性だ。彼氏が出来て、約束をして、結婚情報誌を買いに行ってそれを二人で見る、そんな図を夢みてそうなお嬢さんなのだ。・・・私なら、別にしきたりやなんやには拘らないんだけどさ。
私が口を震わせて声を出せないでいると、彼女はついに感極まって涙を零した。
「で・・・ですから・・そんなのは嫌だって、言ったんです・・・そしたら、ハッとしたように次は一生懸命謝ってきました。ごめん、って。・・でも・・・でも・・・」
私物鞄からティッシュを出して渡すと、彼女は上品に目にあてて頭を下げる。
そして顔をあげて言った。