女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 ならば、こちらに集中しなくては。

 仕事はさっさと覚えて周囲になじむべし、てのが長年の派遣生活で身につけた自分なりの規則だった。

 レジや接客は問題なかったが、初めてする包装には手こずった。大野さんが大体皆さん5日くらいはかかるから、大丈夫よと慰めてくれたけれど、ちっとも思い通りに動いてくれない自分の両手にイライラする。

 昼食に来た休憩室で大きく息をついた。

 まだ新しいこの百貨店は従業員の施設も綺麗で設備が整っている。首になったばかりの以前の会社では個人のロッカーもなく着替えはトイレだったし、食堂なんてのもなかったからこれは嬉しい驚きだった。

 レンジもあるし、お茶もタダ。よし、明日からはお弁当組になろうっと。いくら安い店員食堂でも、毎日ともなれば結構な出費だもんね。

 昼食を済ませて、考える。

 まず、私は何をしたいのか?しっかりとした目的を立てなければ、あの男の姿を見た瞬間に商品を山ほど投げつけてしまいそうだ。それはお店にも迷惑だし、第一格好悪い。

 ・・・・・お金、は、もういいか。あいつしか盗ることなんて出来ないが、管理が甘かった私にも責任はある。手切れ金のつもりで諦めよう。そこまで考えて、現在の口座残高を思い浮かべ、一人で首を振った。・・・・・いやいやいや、やっぱり搾り取れるんなら、貰いましょう。金持ちじゃないんだし、お金は大事よね、うん。

 そしてそして・・・。


< 27 / 274 >

この作品をシェア

pagetop