pianissimo.
夢中で見入っていたら、ガクン、と落ちるような感覚。そして、大きな音を立てて私の自転車は横転した。


車二台がなんとか擦れ違えるぐらいの幅の、中央線など何もない道路。田んぼ沿いの幅30センチぐらいを残して、濃い紺色のアスファルトで舗装してある。


余所見をしていた為、アスファルトの上から土剥き出し部分へ落っこちた。

それだけなら何てことはなかったのだけど……。その境目の段差に自転車の前輪が引っ掛かってしまった。バランスを崩してアッと思った時にはもう、自転車はグラリと傾き、気付いたら私は、アスファルトの上に叩きつけられていた。



痛い……。

右足太ももを強打した上に、擦り剥いた。何本もの赤い筋が大きく走り、それがじわりと滲み出す。目撃者がいなかったことだけが、せめてもの救い。


捲れ上がったスカートを取り敢えずは直し、痛む右足を両腕で抱え込んで蹲った。うーん、情けない呻き声を小さく漏らして痛みに堪える。


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