pianissimo.
と、長屋の真ん中辺りの扉が、ガラッと軽快な音を立てスライドして開き、中から中学生か高校生ぐらいの女の子が飛び出して来た。


深い紺色のジーンズに、爽やかなレモン色の半袖ジップパーカー。突然私の視界を彩った彼女に、思わず目を奪われてしまう。

綺麗。腰まである真っ黒で真っ直ぐな艶々した髪が、明るいレモン色に映える。



彼女は玄関横にとめてあった自転車に慌ただしく跨って、すぐさまペダルに足を掛けた。

すごく急いでいるみたい、なんて思いながら、自分の怪我のことなんかすっかり忘れて、勇ましく自転車をこぎ始めた彼女をぼんやり眺めていた。



けれど彼女は私に気付き、すぐさまキュキュッとタイヤを軋ませ自転車を止める。そうして軽やかに降りると、流れるような滑らかな動きでスタンドを立てて、自転車はそこに置いたまま私の元へと駆け寄った。



「大丈夫ですか?」

すぐ傍にストンとしゃがみ、彼女は私の顔を覗き込んで心配そうに聞く。


「あ、うん、平気」

と頑張って笑ってみたのだけど、どうも頬が突っ張っていけない。


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