pianissimo.
ここは……我慢するしかなさそう……かな?


決意を固める必死な私を余所に、彼女は「私、友達と約束してるから、もう行きます。じゃっ!」なんて言いながら朗らかに笑い、右手を私に向かって軽く上げる。そして、私を置き去りにして風のように去ってしまった。



仕方なく、靴は履いたままで玄関に腰を落とせば、襖がソロソロとゆっくり開く。そして、『お兄ちゃん』と呼ばれた人が気怠そうに姿を現した。


ゆるり、不機嫌顔で私に視線を寄越した彼は、途端、もうそれ以上は無理だろうってぐらいに目を見開いた。



けれど、彼とほぼ同時に私も愕然とする。

呼吸を止めてしまったのだろうか、口を開くも喉を鳴らすことができない。金縛りにあったみたいに身体も動かせない。



ライガ……。



「凜子……先輩? なんで?」

ライガは呆然と私を見詰めながら、ポツリ、尋ねるというよりは独り言のように弱々しく呟いた。


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