pianissimo.
バサッと私の傘が音を立てて跳ね上がり、誰かが勢い良く飛び込んで来た。



「やっぱ凛子先輩」

突然の乱入者は、子どもみたいにニカッと無邪気な笑みを見せ、なんら気後れすることなくそう言った。


余りに突然で、余りに予想外。私の名前を覚えていたことも、こうしてライガの方から近付いて来たことも、何もかも全部。



為すすべなく呆然と立ち尽くして、ただ、見上げるほど背の高いライガの顔をぼんやり眺めていた。



「家、どこ?」

そう聞かれ、「自転車」などとちっとも噛み合っていない答えをポソッと返した。場所聞かれているのに、なにゆえ交通手段? もうホント嫌になる、泣きたい。


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