pianissimo.
「彼女も他のヤツと帰ったから、いんじゃね?」

ほんの少し強めの口調で、ライガは私の言葉を遮った。


天使のように微笑んで、不実なことを口にするライガ。その細められた瞳が艶やかに深く輝いて、私の目は捕われたみたいに釘付けになった。



「なっ? って……。先輩、聞いてる?」


ライガの言葉でハッとしてバチッと瞬きを一つしたら、クリアな視界が戻ってきた。あっぶなーい。私、どこか違う世界に軽くトリップしかけていた。



「聞いてるよ。そんな風に可愛い顔したって駄目なんだからね。『彼女がやるなら俺も』なんて、そんな仕返しみたいなこと」

仕返しでも腹いせでも何でもいいから、どうぞ私を使ってください、都合良く……。本心ではそう思うも、そんなことはもちろん言えない。


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