pianissimo.
「俺、可愛い?」

ライガは照れくさそうにクシャッと笑う。結構長々と喋ったつもりなのに、聞き取れたのそこだけ? と呆れた。



「可愛くない」

「今『可愛い顔』っつったし」

「言ってないっ! 絶対に言わないっ!」


躍起になって言い返せば、フッと勝ち誇ったようにほくそ笑み、ライガは私の傘を横から奪い取った。そうして歩き出そうとする。


ムッと膨れて、その場にカチコチに固まったまま動こうとしない私。ライガはそんな私を振り返って、

「濡れるよ?」

フワッと柔らかく声をかけ、優しく目を細めて笑った。まるで子どもみたいな扱いに、益々膨れる私。


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