pianissimo.
「ねぇ、もう行こーよ」

彼女が背後からライガの腕を取ってグイと引き、ねだるような甘ったるい声で言った。


「先行ってろ」

ライガは、彼の左腕を大切そうに抱きしめている彼女に向かって言い、その両腕の中から自分の腕を引っこ抜くと、「すぐ行くから」などと更に続けて、屈託なく笑って見せた。



彼女に何てこと言うんだ、気まずいじゃないか。


言葉が見つからず、黙ったまま戸惑っていると、

「ほらぁ、先輩も困ってんじゃん。これ以上噂立ったら迷惑でしょ? いいから、一緒に来て」

再びライガの腕に抱きついた彼女は、頬をプクウと膨らませて、上目づかいにライガを睨み付けた。


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