【短編】ブレンディ・ロマンス
「っ・・・てー」

走った勢いのまま、覆い被さるように倒れこんだことりと一緒に転倒した崇也が眉を顰めながら痛みに呻く。


「ごっ・・・ごめん・・・!」
「怪我は?ごめん。受け止めようと思ったんだけど、足が滑って・・・・」


きまり悪そうに謝る崇也にことりは強く首を横に振った。


「こんな遅くにどうしたんだよ。残業にしても遅すぎだろ?もうすぐ日付が変わ・・・!?」


面白くなさそうに眉間に皺を刻んだ崇也の言葉が驚きに揺れる。


「ことり?」

言外に何かあったのかと含ませた崇也の声が耳を震わせ、胸が小さく、けれど確かに音を鳴らした。腰を支えるように置かれたままになった崇也の手に上からそっと手を重ねる。


触れ合う体温に、言葉にならないほどの安堵を覚えた。




「あの・・・ね」




耳はあなたの声を聞きたいと望んでいた。


手はあなたに触れたいと求めていた。


目はあなたを見たいと願っていた。






頑固に意地を張って抗っていたのは頭だけで心は答えを出していた。
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