たいむ あうと。

生まれつき体が弱く、寝ていることが多いので亜子は母親にあまり甘えられず、鍛錬ばかりに励む日々を送っていた。
何かあった時、光典をー皆を守る力を手に入れる為に。
「寂しくないのか?」
予想外の言葉に琥珀を二度見した。
「な、何だよ」
「別に…寂しくなんてないし」
私はなるべく、琥珀の前では弱い所を見せないようにしていた。
母親に甘えられない悲しみも、期待されるプレッシャーも、全部一人の時に考えていた。
だからこんな事を聞かれて、驚いてしまったのだ。
「…ゆーい!!」
琥珀は唯を呼んだ。
唯は、私の双子の弟。
皆からとても可愛がられている。

「何??」
眠かったのか、あくびをしながらこちらへ来た唯。
その仕草を見て思わず可愛いと思ってしまう。

「姉ちゃん疲れてるみたいだから、部屋まで送ってやってくれよ」
「は!?疲れてなんか無いし!!」
「さっきから目、ぱちくりしてるぞ。眠いんだろ?寝ろよ」
ー時計を見ると、もう11時。
9歳の子供がその時間まで起きるのはしんどかった。
それは、唯も琥珀も同じことだけど……。
男女の差って、ここで出るんだね…。
「…」
返す言葉が見つからず私は黙り込む。
そんな姿を見かねたのか、琥珀は背中を叩いた。

「俺、まだ用事あって帰れないから、唯に頼む!!」
そう言って琥珀に腕をつかませ、私はしぶしぶ部屋に帰った。
部屋につくと、ぐったりとして、その場に倒れ込んだ。

「大丈夫ですか?姉様」
唯はくすくす笑いながら聞いてきた。
「何で笑ってるの?」
「姉様は本当に、琥珀様に弱いんですね」
ー図星をつかれた気がして、また顔を赤らめる。
その顔を見ると唯は可愛い顔で微笑んだ。
亜子は琥珀の事が好きだった。
小さい頃から常に一緒にいてくれて、何でも分かってくれる。
まだ9歳だった亜子は、恋愛というものが分からなかった。
ただたまに抱き合う両親を見て、何となく憧れていた。

「そんなんじゃない!!唯も早く寝な!!体に悪いから」
「分かりました。おやすみなさい」
たった一人の姉弟だけあって、亜子は唯を可愛がっていた。
母親の遺伝子を受け継いだのか、少し体が弱いのもあった。
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