たいむ あうと。


龍の手は暖かく、武器を持つ手だとは思えない。
ふと龍の顔を見ると、彼は悪戯な笑顔を浮かべた。
思わず心が弾んでいるのが分かる。

ー龍様…。

私、あなたのこと…。


「亜子!!働きなさいよ!!」
いいところで美加がやって来た。
心なしか、龍も驚いた顔をしていた。

「はは、良いんだ美加。お前も休め」
「えっ…。…ありがとうございますっ」
龍に話しかけられると、皆が笑顔になる。
貴方のような人と共に戦えて、私は幸せです。




「…やり過ぎなんじゃないか?」

葵が意味深に悠に話しかけた。
自分の短い髪をさわりながら、亜子を見つめる。
悠は苦い顔をして、楓にも聞こえる声で言った。

「アイツが一番責任を感じてるからのー」
「あいつはもう家族同然だ。今更ゴタゴタ言う必要は無いんじゃないか、葵」
楓が厳しい顔をして、葵の目をとらえる。
葵は喧嘩を売るように楓を見つめ返した。
「俺は絶対に認めないね。家族?冗談だろ」

楓は立ち上がり、葵を見下して言った。
「今の言葉、取り消せ」
楓は思わず剣を構えた。
彼の持つ黒い髪が揺れた。

「やめてください!!」
美加がとめに入る。
不気味に笑っている葵と、怒りを隠せない楓。
その中に入るのは、とても勇気がいることだった。

龍は真剣な眼差しで2人を見る。
葵はその目線に気付き、龍を見た後、舌打ちをして自室に戻った。
楓も剣を収め、座り込んだ。

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