たいむ あうと。

「悠、楓!!」
彼らは疲れた顔で、グッタリとしていた。
見た目の怪我からして、精神的な疲労だろう。

「怪我の処置はもうしたから大丈夫」
美加が悠の背中に手をさすりながら言う。
悠は落ち込んでいるのか、下を向いたままだ。

「今回の戦は、比較的に簡単に終わるはずだった。
だけど、我々にとって予想外な事件が起きた」
楓が難しい表情をして亜子に説明する。


「…葵が、裏切った」
「は…!?」
予想もしていなかった言葉に亜子は戸惑った。
さっきよりも何倍も。

「それで体勢が崩れて、敵は倒せたんだが…
負傷者が多い。その中でまだ動ける俺達が伝言の
為にここに来たって訳だ。早くお前達に来て欲しい」
亜子は走って救急箱を取りに行き、靴を履いた。
その行動の早さに楓は目を大きくしている。

「はやく行かなきゃ、駄目でしょ!?」
ー私のせいで少しでも遅れちゃったんだ。
万が一、龍様に何かあったら…私…。

「あたし達が焦っても駄目でしょ!!落ち着いて、亜子」
美加が慰めるように亜子に言う。

確かに亜子は動揺していた。

「そういうことじゃあ~」
悠が亜子の頭をわしゃわしゃと撫でる。
しかし、亜子の心が落ち着くことは無かった。

待機場所につくと、怪我をした仲間が沢山座っていた。
亜子達を見ると、早く治療してくれとせがんでくる。
亜子と美加は手分けをして怪我の処置に向かった。

「ーあれ?龍様は?」
龍がいないことに気付いた亜子は、まわりを見渡す。
たしかに龍の姿が無い。

「龍なら、さっき川に行くって言ってたぞ?」
「川!?」
亜子は自分の後ろに流れている川の岸辺に、人影を見つける。
気付いたときにはもう走り出していた。
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