蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜奪われた物〜‡

出てきた物は、二枚の紙と不思議な銀の十字のアクセサリー。
それらを出した後、祖父は空の箱を私に手渡し、テーブルに目配せをした。
つられてテーブルの物を見る。
すぐに侵入者達は手を伸ばし、銀の十字架と、二枚の紙を手に取った。

「間違いない…おい」

十字架を一人が用意した袋に入れると、もう一人が部屋にあった置物の皿を持って来た。
そしておもむろに紙に火をつけ、皿の上に置いた。

「っあぁっ…」

慌てる祖父とは反対に、私はこの後の事を考えていた。

「さて、では…」

こちらに目を向けたその瞬間、祖父を後ろに引っ張り、ソファーの裏へと押し込む。
その時、手にしていた箱を持たせるのを忘れない。
すぐに飛びかかろうとする侵入者三人をテーブルにあった花瓶を投げてバランスを崩させる。
次にテーブルの上に飛び乗ると、端にある観葉植物をつかみ、遠心力を利用して振り回せば、鉢が一人に向かって飛んだ。
そのまま振り上げれば、植えてあったままの形の土がもう一人の顔面を直撃した。
降り下ろしざまに残った一人の頭へ叩きつける。
それぞれにメチャクチャにされた三人の侵入者は、支え合うようにして窓から出て行った。

「はぁ…」
「蒼葉…危ないよ…」
「えっ…ごめんなさい…」

指摘されれて見回せば、部屋は酷い状況だった。

「まぁ、無事だったから良いんだけどね」

こんな時まで能天気な祖父は、ゆっくりと部屋を見回しながら言った。

「っあッ、木坂さんっ」

慌てて入り口で倒れたままだった木坂を揺すれば、しばらくして目を覚ました。

「…お嬢様…っ痛」
「大丈夫ですかっ?」
「ええ…何とか………何があったのですかっ…?
お嬢様っ旦那様もお怪我はっ!」
「大丈夫だよ。
ちょっと蒼葉が派手にやり過ぎちゃってね」
「…すみません…」
「取り逃がしちゃったけど、みんな無事なら良いや。
ただ後片付けよろしくね」
「ええ…掃除は…やりがいがありそうですね…皆を見て来ます」
「私が…」
「いえ、お嬢様は旦那様といてください」

木坂を見送り、ハッとして祖父へ言った。

「…春臣にだけは言わないでください…」
「ん〜たぶんムリ☆」

重いため息が出た。


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