蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜地、降り立つ〜‡

荒廃した神殿の祭壇。
それがこちらの世界に帰郷して初めて降り立った場所だった。
息をつきゆっくりと足音を響かせながら外へと向かう。
扉を開いた先にあったのは…。

草花の広がる大地。
青白い月の光に灯された満天の星空。
緑の匂いがする穏やかな風。

それはとても懐かしい空気で、周りを見渡し神殿を振り返えれば、色褪せる事のない記憶の中の風景と重なった。

「…まさかここが扉の場所とは…」

ある意味悪趣味だ。
今は半ば廃棄と化しているが、この丘の上にある神殿は、反乱軍のアジトの一つだった。
私はここで反乱軍に加わった。

〔みぃ?《ひめさま?》〕
「ん?」
〔みみぃみ《おかえりなさい》〕
「お前…まさか…”フラ”?」
〔みみみぃ。
みむぅみ《そうですっ。やっとあえた》〕
「…っ何で分かるんだっ…私がリュスナだと…」
〔みみゅぅみみみ《”たましい”と”こころ”がおなじです》〕
「…そうか…。
会えてうれしい。
久しぶり、”フラ”」
〔みみみゅみ《あえてうれしい》〕

会えてうれしいと言ってくれる小さな友。
昔のままならば、うれしいなどと言う言葉は出なかったと思う。
好意を受け止める余裕のなかった昔の”私”…”愚かな私”…。

「頼みがあるんだ…。
私を、師匠の…ラダの所へ連れて行ってくれないか…?」

一番始めに会いに行くならラダだと決めていた。
会ってくれなくても良い。
一言声をかけるだけでも…。

「みっみみっみゅ《はいっいきましょう》」
「…ありがとう…」


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