Do you love“me”?

「それにしても美月ちゃん、すごい誤解っぷリだったねー」

一度その大きな手で頭を撫でた後、抱きしめていた手をほどいた稜君は、首を傾げて私の顔を覗き込み、口元に笑みを浮かべたまま、ちょっと睨むように目を細めた。


「俺、美青ちゃんを想いながら、あんな気の強い女と付き合ってる事になってたんだぁ」

「だ、だって!!」

それは確かにひどい誤解っぷりだったとは思うけど。


「心外だなぁー」

「そ、そんな事言ったら、稜君もじゃんっ!!」

「あー……」

「私が翔太さんの事、好きとか!!」


そうだよ。

稜君だって――。


「しかも、言い訳もさせてくれなくて」

「美月ちゃん」

「私の事おいて……いなくなっちゃうし!!」

「ごめん」

「ひ……っく」

「ごめんね」

あの時の私を突き放したような稜君の瞳を思い出して、不安になって、こうして何度も泣きそうになったけれど、ずっと我慢出来ていた。

――それなのに。


やっぱり、涙腺がおかしいんだ。

なんで私、こんな事で今更泣いてるんだろう?

溢れ出した涙に、しゃくり上げながら下を向く。


「ごめん」

もう一度、同じ言葉を繰り返した稜君だったけど、

「こんな時なのに、俺ちょっと嬉しいかも」

「……」

「これからは、俺の前でだけ泣いてね」

人の気も知らないで、何だかすごく嬉しそうに笑ってるから、その笑顔につられて、私の頬まで弛んでしまう。


「……言われなくても、自然にそうなるもん」

「そっか」

止まりかけの涙を拭ってくれた稜君を見上げれば、フッと目を細めて笑われた。

だけど、あれ?


「ちょっと待って?」

「へっ?」

「さっきお姉さんが“待ってるこっちの身にもなって”って、言ってたのは……?」

今更、稜君の言葉を疑う気は毛頭ないけど、その言葉の意味がどうしてもわからない。


「あー……」

すると目の前の稜君は、私の言葉に、それまでの笑顔を引っ込めて、ちょっとゲンナリしたような顔になり、

「病室戻ったらわかるよ。……巻き込むけど、ごめんね」

よくわからない、そんな言葉を口にした。


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